会社に頼らない自立した個人のキャリア育成 社会を変えるビジネスを創る

現在、エムアウトで事業参入フェーズにあるギノ株式会社の社長を務めています。ギノが運営する「paiza(パイザ)」は、求職者起点の教育研修・転職支援サービスとして、ITやWebエンジニアをターゲットに、コーディングスキルなどの専門性に基づいた転職やキャリアアップをサポートしています。スペシャリストが自らの得意領域を伸ばし、活躍できる仕組みを創ることを目指しています。

「大卒」という勲章に魅力を感じず。高校卒業後、バンドマンに。

実は、私は高卒でバンドマンをやっていまして(笑)。
エムアウトは、どちらかというと、有名大学を出て、ピカピカの大企業での勤務経験がある人が多いので、私の経歴は少々異質かもしれません。 私が高校を卒業した当時、バブル経済の崩壊によって、企業の大型倒産があったりと、大企業を中心とした終身雇用制が盤石なものではないという事が新聞の記事で大きく出始めた時期でした。私自身、大卒という学歴は、「よい企業に入り、終身雇用で一生安泰に生きるためのパスポート」としか思っていなかったので、終身雇用が崩壊しつつある中、大学に入る事は完全に意味のない行為としか考えられず、大学に行くことをやめました。 当時は根拠のない自信を持っていたので(笑)、「これからの時代は実力主義の時代だ、俺は実力で生き抜いてやる!」と学歴社会から早々に飛び出してしまいました。

でも実際ドロップアウトしてみると何をしてみればいいのかわからない。それまでレールの上を押されるままに進んでいたので、いきなり自由になって途方にくれました。人間の体内時計は25時間らしいのですが、毎日何もしないと1時間ずつ寝る時間がずれていく事を知ったのもこの時です。 幸い、「若いうちは色々悩め」という寛容な両親のもと、ブラブラしながら作曲したり絵を書いていたりしていました。その後、お小遣い稼ぎにアルバイトを始めたり、興味のあったWebデザインの勉強を始めたり、プロを目指してバンド活動をしたりしていました。

実は当時、インディーズでCDを1枚出したりしていて、音楽で食べていけないかと一瞬考えたりもしたのですが、演奏そのものは結構嫌いで、どういう曲を書いて、どういう振る舞いをすれば客に受けるかといったプロデュースに楽しさを感じていたこと、また、独学で勉強していたWebデザインの方に関心が移っていったこともあって、バンドをやめてWeb制作やシステム開発を行うIT企業で働くことになりました。ちょうど一般的な大学卒業時の年齢と同じ、23歳の頃です。

従業員約20名の中小企業。“会社の経営”というものを身近に感じる。

最初に働いたこのIT企業には、結局10年近くお世話になりました。この会社は社員数が20名程度で、Web制作からシステム開発、パソコン教室まで手広くやっていた、数多ある「中小零細のよろずIT企業」です。仕事は裁量を持たせて任せてくれたので、とても楽しかったですね。予算数十万から百万円程度の案件を、営業、企画、デザイン、開発、納品といった一連の業務を自分一人でこなしていました。 最初はWebデザイナーとして入ったのですが、PHPやMySQLなどプログラムも独学で覚えたり、当時まだオープンソースのCMSがなかったころに自分でCMSをつくって売り歩るいたりと、かなり自由にやらせてもらうことができました。また、会社の規模的にも社長との距離が近かったせいか、“会社の経営”にも大きな関心を持つようになりました。

当時、経営の専門書も多数読み漁りながら、従業員数十名、売上数億円の規模の会社を経営するにあたって、自分ならどうするか?どう考えるか?ということを日常の中で常に考えるようになりました。「起業」ということを漠然と考えるようになったのはこの頃でしょうか。ただ、この時期は、何が何でも起業したいというより、自分が経営のハンドルを握ればもっとうまく操縦できるのではという、今思えば少々奢った考えの方が近かったですね。

1年かけた新規事業は本格参入に至らず失敗。原点に返り、「根幹の仕組みを変えるビジネス」とは何かを突き詰めて考える。

30歳を過ぎて、次のステージを模索する中、実はその当時もエムアウトに入社するチャンスはありました。ただ一方で、もう少しWebの仕事を極めたいというか、小規模の会社で独学でやってきた自分の腕をもう少し大きな舞台で試したい、大きな仕事をやってみたいという気持ちが捨てきれませんでした。結局、31歳の時、誰もが知っている大企業をクライアントに持つ、デジタルマーケティングで名が知れた企業に転職しました。
新しい会社では、数十人のメンバーが参加するプロジェクトチーム、案件規模は数億円と、以前とは比べ物にならないほど大きなお金と人が動きます。厳しい環境でしたが、それでも割とすぐに会社内で最大規模の案件を成功させたりと、独学で培ってきた自分の力は通用することが分かり、大きな自信にもなりました。また、大企業相手での仕事の進め方、数十人いるメンバーをまとめ方、業務改善の進め方などを学んだり、自分の専門分野に関する書籍を出版できたりと、たくさんのことを経験することができました。

しかしWebマーケティングのプランニングなど、上流工程から携われたとしても、やっていることは結局受託業務で、経営の高いレベルでの意思決定に関われるわけではありません。「Web戦略」といえば聞こえはいいですが、「経営戦略」から見ればWebは戦術レベルにすぎません。例えば、クライアントのWebマーケティングの課題を戦術レベルで改善しようとしても、大もとの経営戦略やサービス設計そのものが間違っていれば、末端で努力してもあまり意味はないという事を嫌というほど味わいました。間違っていることをどんなに綺麗に実行しても間違いに変わりはないのです。

根本の課題を解決するためには、そもそものビジネスモデルやゴールの設定をより良いものにしないといけない。そのためには外部から何かをするのではなく、自分でゼロから事業創出をやるしかない。自分の方がうまく経営できるのでは?と漠然と考えていた数年前からくらべて、自分のやりたいことがより明確になりました。

転職先はナショナルクライアントを相手に、大規模案件を手掛ける企業。しかし、上流工程でも受託開発という事実には変わりはなく、限界を感じる。

エムアウトに入社してすぐ、あるテーマでの新規事業プロジェクトメンバーの社内公募がありました。自分を含め、そこで選抜された数人のメンバーで、プランニングに6ヵ月、FS(feasibility study/実現可能性の事前調査)に5カ月と、事業の本格起ち上げに向けて、1年近くの時間を費やしました。
エムアウトのよい所の一つには、雑務に追われず、事業のプランニングやFSにとことん時間を使えることがあります。1日12時間、プロジェクトチームメンバーと徹底的にブレストを行うこともできますし、とにかく考える時間があります。新規事業だけにここまで集中して時間を使える会社は、エムアウト以外には日本でほとんどないのではないでしょうか。

ただ、結果としてこの事業は一旦ボツ、抜本的なやり直しになってしまいました。この時手がけていたものは人材紹介サービスです。人材紹介業というのは非常にアナログな世界で、「自分達ならもっと効率的な仕組みでうまく回せるのでは?」という考えがベースにあった新規事業でした。後になって痛感するのですが、結局それは小手先だけを改善合理化しただけのもので、誰を顧客と設定して、どのような価値を生み出すのか、何を目指すのか、「軸」がきちんと定まっていませんでした。

「軸」というのは、要は事業コンセプトでもあるのですが、これが曖昧だと、例えば、営業で自社サービスを説明しても、相手も自分達も何かしっくりきませんし、大きな方針がふわふわしているので、末端様々な場面でも判断がぶれてしまいます。 根幹の仕組みを変えたいという思いでエムアウトに入ったことを改めて思い出しました。表面を化粧替えしただけのビジネスではダメで、新しい仕組みを生み出すためには、もう一度徹底的にビジョンレベルで全く新しいことを志そうとゼロベースですべてをやり直しました。

転職の在り方、会社に頼らない個人のキャリア育成の在り方。日本の社会の在り方を「ギノ」を通じて変えていきたい。

そういった経緯を経て、2013年に起ち上がった会社が「ギノ」です。
「ギノ」は、プログラマー向けの人材サービスとして、求職者起点の教育研修・転職支援サービス「paiza(パイザ)」を展開しています。「paiza」は、プログラマーのコーディングスキルをテストによってスコアリングすることで、技術を客観的な基準で評価・可視化し、企業が求めるスキル基準とプログラマーのスキルを効率的にマッチングする仕組みです。
「ギノ」という社名には、どのような環境でもたくましく生きるプロフェッショナル・スペシャリスト人材(=技能人)の成長を支援する、という意味を込めていています。

新しいビジネスの起ち上げにあたって、改めて思ったことは、ビジネスを通じて社会を変えたいということ。学歴社会はもう終わったと思ってドロップアウトしてからちょうど20年たってしまっていますが、まだまだ今の転職の仕組みは学歴、職歴ベースで実力を全然見れていない。その証拠に例えばエンジニアを雇うのにエンジニアの実力(プログラミング力)を大部分の会社が見ていない。
高度経済成長期であれば、兵隊として企業の言うことをきく標準パッケージ化されたサラリーマンを量産することが国益に直結したと思うのですが、これからの時代はもっと個人の持つ強みを生かして、その強みがネットワークで結ばれていく時代です。そうしないと個人としても今の世の中をサバイブできません。そのためにはきちんと個人の実力を評価するためのインフラが非常に重要だと考えており、それを実現する一つの方法がpaizaです。

私たちは、転職の在り方や、会社の傘に頼らない自立した一職業人としてのキャリア育成の在り方、またそういった社会人を育てる学校教育の在り方を、「ギノ」を通じて変えていきたい、学歴などの要素に左右されず、個人個人の得意領域が生かされることで、自分らしく活き活きと生きられる社会にしたいと願っています。