スタートアップの成功確率を上げるために“失敗”は貴重なノウハウ

現在、エムアウトの事業開発グループで新規事業のR&Dを担当しています。スタートアップの成功確率を上げるべく、様々なビジネスの成功事例を調査したり、まだ充分に成熟・産業化されていない業界にマーケットアウトの視点で新規参入できる余地があるかどうか検討したりするなど、日々、新規事業の種を探しています。

プロダクトアウトの業界で感じたジレンマ、存の業界構造を変革するビジネスを立ち上げたいという思い

新卒で不動産会社に入社し、マンションなどの住宅用不動産の企画開発プロジェクトに関わり、土地の仕入れ、施工、販売促進など、開発プロジェクトの上流から下流まで仕切ることを経験しました。ここでは、収益達成への強いプレッシャーの中、事業計画の立て方、地主や施工会社、販売会社など外部の利害関係者との交渉術など、様々なスキルや強い精神力を身に付けることができました。しかし一方で、不動産業界というのは、“仕入れの土地ありき”という、プロダクトアウトの最たる業界で、土地を仕入れて上物を立てたら、とにかく顧客に買ってもらえるようプッシュして、売り切ってしまえば、あとは野となれ山となれといったような、あまり褒められない風土がありました。

いつの頃からか、供給側に情報や決定権が偏っていて、消費者が不利益を得やすい既存の業界構造を変えられるようなビジネスをやりたいという思いを抱くようになりました。そんな中で出会ったエムアウトの掲げるマーケットアウトという概念は、まさしく自分が目指すもので、消費者視点で既存業界のやり方を打破するビジネスを立ち上げたいと思い、入社を決めました。

エムアウトで立ち上げた中食の新規事業、社長として本格的な事業参入へ

エムアウトに入社してしばらくは、進行中のメンタルヘルスの事業プロジェクトに参加し、事業企画や経営管理などの業務を担当しました。その後、自分で新しいビジネスプランを企画することになり、その時の経験や知見などを活かして、肥満や食のコントロールに関する課題を解決する事業を選びました。具体的には、女性が負担なくカロリーコントロールできる惣菜やお弁当を提供する中食事業です。フード業界は初めての経験でしたが、世の中のトレンドや消費者の健康志向にマッチした事業ですし、テストマーケティングで充分な手ごたえもありました。絶対に成功させる、そんな強い意志を持って、設立した新会社の社長として、本格的に事業参入へ舵を切りました。

上々の滑り出しと思った事業はすぐに壁に直面、現場で日々起きるトラブルに走り回る

ヘルシーで低カロリーなお弁当・総菜というコンセプトは、出店交渉先の商業施設の担当者からも評判がよく、会社を設立して半年足らずで、恵比寿の百貨店や二子玉川駅前の商業施設に新店舗をオープンすることができました。ところが、上々の滑り出しと思った事業はすぐに壁に突き当たります。売上は中々計画通り行きませんし、想定以上に人件費や食材の廃棄ロスなどのコストがかかります。オープンした新店舗はアルバイトのスタッフが中心なので、何か想定外のことが起きると自分が行って対応しないといけません。結局は、日中は店舗でお弁当の製造や販売のヘルプ、トラブル対応など現場の仕事をこなして、夜は日中に起こった問題に対する打ち合わせ、食材の受発注、経営管理の業務などをこなすような毎日でした。

苦渋の決断、事業撤退。失敗や反省をノウハウとして次にどう活かしていくか

毎日帰宅できるのは深夜か明け方近く。ものすごくハードな日々なのですが、自分が社長として事業の責任を負っているという気概があるので、何とか頑張れてしまうものです。しかし、売上を増やすため、コストを圧縮して利益を出すため、様々な試行錯誤を重ねましたが、どれも現状を抜本的に改善することはできず、結果として約1年半で店舗をクローズし、事業を撤退することになってしまいました。

今振り返ると、様々な反省があります。経営管理の面でいうと、現場を任せられるような人を置かずに、社長である自分が現場の業務の細部に入り過ぎてしまい、経営者として物事を俯瞰して見られなくなってしまっていたこと。事業コンセプトの面では、「こんなサービスがあったらいいな」というアイディアだけで事業を初めてしまったということ。なぜそのサービスが今まで世の中にないのか、既存の会社がやらない理由は何なのか。「こんなサービスがあったらいいな」は、消費者が切実に持っているニーズなのか、単なる志向性なのか。それらをとことん突き詰めて考えられなかった、見極めが甘かったのが失敗の要因だと思っています。

新たな挑戦、マーケットアウトを徹底した事業の創出を目指して

中食事業を撤退した後、エムアウトに戻り、今は再び新規事業の開発に携わるとともに、新規事業の評価手法の見直しや、事業コンセプトの評価項目を定量化する試みなども担当しています。自分が立ち上げた事業が結果として失敗に終わり、クローズした当初は、申し訳ないという気持ちが一杯で、エムアウトを退職することも考えました。しかし、田口社長から、失敗こそが新規事業の成功確率を上げるための貴重なノウハウで、それを活かして事業評価の仕組みを作ったり、次の新規事業の立ち上げを頑張って欲しいと、叱咤激励の言葉がありました。私自身もこのままでは終わりたくない、失敗したという大きな経験を武器にリベンジをしたい、そんな思いが強くなりました。

現在、事業開発グループで、ターゲットとしているマーケットは、事業としてはある一定レベルの市場規模はあるものの、非産業化されていないマーケット、業界構造が硬直したプロダクトアウトなマーケットです。具体的には、教育、介護、農業といった業界に注目しています。エムアウトで得られた貴重な事業経験を活かして、マーケットアウトを徹底した新たなビジネスを創ることに挑戦し続けたいと考えています。